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デジタルメディアで「民藝」を再考する

この記事は落合陽一氏による、『伝統とイノベーション-ものづくりにおけるブラジルと日本の新しいアプローチ』トークイベントの要約です。2022年3月17日にジャパン・ハウス サンパウロ主催、文化庁とサンパウロ大学建築都市学部の共催により開催されたイベントであり、2021年文化庁文化交流使のプログラムの一環です。

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デジタルメディアで「民藝」を再考する。

持続可能性、多元宇宙的芸術と科学、そしてデジタル・ヴァナキュラリティ

落合陽一

コンピューターを使っているという意識のない中でだれでもコンピューターを使える、そのような環境をあらわすユビキタスコンピューティングという概念があります。その中では、人々は自然の一部としてコンピューターを認識するのではないでしょうか。それを私はデジタルネイチャーと呼んでいます。デジタルネイチャーに近づくなかで、日本の伝統文化とロボティクスや風景が組み合わさったらどうなっていくのでしょうか、我々の伝統的なものをどうやってコンピューターを使って再発見するのでしょうか。ここ5、6年私はそのようなことに取り組んでいます。

はじめに、トークの主題となる《民藝》というコンセプトを紹介します。民藝は、手仕事でつくったものがその土地の文化を反映して、特定のアーティストではなく職人の手によってつくられるようなものです。日本では、柳宗悦という人物がその価値を人々に提唱しました。

民藝はデジタルの時代にどう考えなおされるでしょうか。

まず、民藝をデジタルテクノロジーを使って再発見することについて考えましょう。 自然と見分けがつかなくなったコンピューターは、民藝を保存する上での新しい自然環境になるでしょうか。

Transformation of Horizon(2021)では、展望台に輝度の高いディスプレイを設置して、地平線を描き変える作品を制作しました。この作品のようにある程度大きなスケールをもっていると、コンピューターを見ているという意識よりは、デジタルデータと自然にやりとりしている状態に近づく気がします。例えば、ここ数年は建築スケールの作品がつくりやすくなりました。これで、デジタルをある種の自然の一部、ある種の素材の一部と捉えられるのではないかと思います。木やコンクリートのようにデジタルが捉えられることが興味深いと思っています。

つぎに、デジタルの上にもおそらく民藝のようなものが存在するのではないかという話をします。

Re-Digitalization of Waves(2022)は、私のNFT作品です。 これは、もとは銀色の浮いている彫刻作品でした。浮いている部分が落ちてよく壊れてしまいます。このようにメディアアートは本質的に保存の問題を抱えているので、デジタルに変換して残そうと考えました。そのままでアーカイブしても映像になってしまうので、リミックスしたり色を変えたりしてNFTにしました。

《Re-Digitalization of Waves》2022年/ Study:大阪関西国際芸術祭 落合陽一
《Re-Digitalization of Waves》2022年/ Study:大阪関西国際芸術祭 落合陽一

このように、デジタルなものが素材として何度も反復されて、何度も生まれ変わるということは、これからもおそらく起こっていくことだと思います。 それが可能になる程度のインフラは整ってきています。

そして、デジタルというものがあたかも民藝とか身体性とか絵画のように、新たな素材のように使われていくのが次の考え方なのだと思います。 質量がない芸術を世界中のあちこちにもっていき、それによって新しい表現や土着性がどのように生まれていくかがこれからのトピックになると思っています。

プロフィール

落合陽一氏

メディアアーティスト。1987年生まれ。2010年ごろより作家活動を始める。境界領域における物化や変換、質量への憧憬をモチーフに作品を展開。筑波大学准教授、 京都市立芸術大学客員教授、大阪芸術大学客員教授、デジタルハリウッド大学特任教授、金沢美術工芸大学客員教授。2020年度、2021年度文化庁文化交流使、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)テーマ事業プロデューサーなどを歴任。写真集「質量への憧憬(amana・2019)」NFT作品「Re-Digitalization of Waves(foundation・2021)」など。2016年PrixArsElectronica栄誉賞、EUよりSTARTSPrizeを受賞、2019年SXSWCreativeExperienceARROWAwards受賞、Apollo Magazine 40 UNDER 40 ART andTECH, Asia Digital Art Award優秀賞、文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品多数。

主な個展として「Image and Matter(マレーシア・2016)」、「質量への憧憬(東京・2019)」、「情念との反芻(ライカプロフェッショナルストア銀座・2019)」、「未知への追憶(渋谷マルイMODI・2020)」、「物化-Transformation of Material Things-(香港アーツセンター・2021)」、など。常設展として,「計算機と自然、計算機の自然(日本科学未来館・2019)」、その他の展示として、SIGGRAPH Art Gallery, ArsElectronica Festical, Media Ambition Tokyo,AI More Than Human(バービカンセンター、イギリス・2019)、おさなごころを、きみに(東京都現代美術館・日本, 2020),北九州未来創造芸術祭 ART for SDGs (北九州市立いのちのたび博物館・日本, 2021),Study:大阪関西国際芸術祭(大阪・日本、 2022)など多数出展。『New JapanIslands 2019・2020』エグゼクティブディレクターや「落合陽一×日本フィルプロジェクト」、「SEKAI NO OWARI at TIMM@ZeppDiverCity東京」などの演出を務め、さまざまな分野とのコラボレーションも手かげる。

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